紙片の魔術師

第1章: 巡り合いの予兆

エピソード1: 静寂を破る少女

梅雨明けの蒸し暑い午後、神崎遥（かんざきはるか）は古びた部屋の片隅で、1枚の紙を折り曲げていた。彼女の手元には奇妙な光を放つカードが散乱している。折り紙のように無造作に扱われるそれらのカードは、ただの紙ではない。

遥が触れるたびに、宙を舞い、微かな輝きを放つ。彼女はその光景に慣れきっているようで、無表情なまま手を動かしていた。しかし、外からのノック音がその静けさを壊した。

「遥、いるの？」声の主は親友の南條咲（なんじょうさき）。咲は薄暗い部屋に足を踏み入れるなり、散乱する紙片を見て驚く。「またこれ、やってるの？」「これって何のこと？」遥は不敵に笑った。

エピソード2: カードに宿る力

咲は机の上に広げられたカードに目を向けた。それぞれに書かれた文様は、人の記憶や感情を形にしたかのようだった。「これ、なんで光るの？」と問う咲に、遥は口元に指を当てた。

「秘密。でも、もし君が助けてくれるなら教えてあげる。」その言葉に咲は眉をひそめたが、結局了承する。「…わかった。でも何をすればいいの？」遥は指を鳴らし、カードの一枚を宙に浮かせた。「これから私たちでこの世界の“記憶”を探しに行くの。」

エピソード3: 招かれざる客

その夜、咲と遥が街中を歩いていると、背後から黒いコートの男が近づいてきた。男は静かに「そのカードを渡してもらおう」と声をかけた。遥は振り向きざまに、カードを一枚取り出し、空中に投げた。

瞬間、カードが風を切るように輝き、鋭い刃となって男に向かった。「君たちは何者だ？」と男が呟いたとき、遥は答えずに咲の手を掴み走り出した。

第2章: 記憶を紡ぐ旅

エピソード4: 初めての追跡

翌日、咲は遥からカードの秘密を聞かされる。「このカードは人の記憶や思い出を封じ込めたもの。その力を使えば、現実を少しだけ変えられる。」遥の説明に、咲は不安を覚えた。「それって危険なんじゃないの？」しかし、遥は軽く肩をすくめるだけだった。

エピソード5: 忘れられた風景

遥がカードを用いて咲を連れて行ったのは、誰もいない廃墟だった。そこは遥の幼少期の記憶が宿る場所だという。「ここで私は大事な人を失った。でも、記憶を辿れば何かがわかるはず。」

彼女はカードを廃墟の中央に投げると、そこに薄ぼんやりとした人影が現れた。

エピソード6: カード狩りの脅威

突然、再び黒コートの男が現れた。「君たちが記憶をいじるのは許されない。」男はカードを吸収する異様な機械を手にしていた。遥と咲は協力し、カードを使って必死に抵抗する。

最終的に男を撃退したものの、遥は疲弊し倒れ込んだ。「咲…ごめん…。」

第3章: 真実への扉

エピソード7: 遥の秘密

目を覚ました遥は、咲に自身の過去を語る。「実はこのカードは、私が生きていくためのものなの。もしこれを全て失ったら、私はただの空っぽの存在になる…。」咲は驚きと共に、遥を支える決意をする。

エピソード8: 最後のカード

カードの力を完全に使い果たすことで、遥は自分の存在を全て取り戻せると気づく。しかし、それには危険が伴う。「咲、お願い。最後のカードを私に託して。」咲は迷いながらも頷いた。

エピソード9: 再生の光

最後のカードを使った遥は、一瞬で光に包まれ、記憶の中に隠された真実を解き明かす。その中には、遥が過去に失った家族や絆が映し出されていた。咲は涙を流しながらそれを見守る。

「これで終わりだね。」遥は微笑み、静かに空へと溶けるように消えた。

エピローグ: 消えた少女の足跡

遥がいなくなった後、咲は一人、彼女が遺したカードの欠片を眺めていた。その欠片には小さな文字が書かれていた。

「ありがとう。君がいてくれたから、私の記憶は完成した。」

咲はその言葉を胸に刻み、新たな未来に向けて歩き出した。