白薔薇の窓辺

第1章: 消えゆく囁き

エピソード1-1: 薔薇の館と少女

森の奥深くに佇む一軒の洋館。そこには「薔薇の館」と呼ばれるガラス張りの部屋があり、 四季を問わず美しい白薔薇が咲き誇る。主人公の少女、雪野アリサ（16歳）は、その館の唯一の住人だ。

彼女は昼間、窓辺で本を読んだり絵を描いたりしながら静かな日々を過ごしている。しかし、 夜になるとどこからともなく低い囁き声が聞こえてくるのだ。 その声に怯える日々を過ごす中で、アリサは「この声の正体を知るべきだ」と決意する。

エピソード1-2: 緑の瞳の客人

ある日の夕暮れ、館に初めての訪問者が現れる。彼の名前は藤堂凛太郎（17歳）。 アリサと同じ年頃の少年だ。凛太郎はこの森で古い地図を探している途中で館に迷い込んだと言う。

彼の緑色の瞳が妙に懐かしく、アリサは不思議な安心感を覚える。 一方、凛太郎もアリサの薔薇のように美しい佇まいに心を奪われる。しかし、夜になり、囁き声が始まると凛太郎もその不気味さを感じ取り、 アリサに「何か隠されているのではないか？」と問いかける。

エピソード1-3: 鍵を持つ少女

凛太郎の助けを借りて館の古い日記や設計図を調べるアリサ。そこで「地下室」への扉が閉ざされていることを発見する。 その扉を開けるための鍵はアリサが幼い頃から持っていたペンダントにあるらしいことを突き止める。

しかし、鍵を開けることへの不安がアリサの胸を締め付ける。「開けてはいけない」と誰かが囁くような気がしてならない。

第2章: 地下室の秘密

エピソード2-1: 闇の中の記憶

凛太郎に励まされ、アリサはついに地下室の扉を開ける。そこには古びた鏡が置かれており、 鏡の前にはアリサが幼い頃に使っていたと思われる白いドレスが掛かっていた。

鏡をのぞき込むと、アリサの姿の中にもう一人の「少女」が映る。その姿はアリサとそっくりだが、 瞳の色が異なり、冷たい微笑みを浮かべていた。

「あなたは誰？」とアリサが尋ねると、その声はまるで自分自身が返事をしているように響く。

エピソード2-2: 双子の呪い

鏡の中の「もう一人の少女」は、自分がアリサの双子の妹ミリアであると語る。 しかし、彼女はこの世に存在しない。「私の命は薔薇に封じ込められているの」と告げるミリア。

薔薇の館に咲き誇る白薔薇たちは、実は彼女の魂の一部であり、館に人を引き寄せる役割を担っているという。 そして、彼女が完全に解放されるには「鍵を持つ者」が鏡を壊さなければならないらしい。 だが、それには重大な代償が伴う。

エピソード2-3: 決意の夜

ミリアの話を聞き、アリサは苦悩する。彼女を解放することは自分の命を犠牲にする可能性を示唆されていたからだ。 一方で、凛太郎は「お前の命を犠牲にするなんて絶対に許さない」と強く反対する。

しかし、館で夜を過ごすたびにミリアの声は強くなり、囁き声は悲鳴へと変わりつつあった。 アリサは「彼女の痛みをこれ以上放っておけない」と決意を固める。

第3章: 白薔薇の選択

エピソード3-1: 鏡の破壊

運命の夜。アリサは凛太郎と共に再び地下室を訪れる。鏡の前でミリアが静かに微笑み、「ありがとう」と囁く。

しかし、凛太郎はアリサを止めるために鏡を掴み取ろうとするが、ミリアの力で動けなくなる。 アリサは意を決してペンダントの鍵を鏡に当て、鏡を割ろうとする。その瞬間、白い光が館中を覆い、 アリサの意識は一瞬にして途絶える。

エピソード3-2: 消えた少女

気が付くと、凛太郎は館の庭で目を覚ます。そこには薔薇も館もなく、ただ静かな森が広がっていた。 アリサの姿はどこにも見当たらない。

凛太郎は彼女を探し続けるが、森はまるで迷宮のように出口を見せない。 ふと、白薔薇の花びらが風に舞い、どこかでアリサの声が聞こえた気がする。「ありがとう。凛太郎」。

エピソード3-3: 薔薇の記憶

数年後、凛太郎は大人になり、再びあの森を訪れる。そこにはかつての館の面影はなく、ただ一輪の白薔薇が咲いていた。 凛太郎はその薔薇を見つめ、懐かしさと切なさを感じる。

「アリサはまだここにいる」と思いながら、彼はその花を大切に手折り、自分の家に持ち帰るのだった。 その白薔薇は決して枯れることなく、凛太郎の心の中でアリサの微笑みを思い起こさせ続けた。

エピローグ: 永遠の白薔薇

それからも凛太郎の人生には白薔薇が寄り添っていた。誰も知らない物語を胸に秘めながら、 彼は毎年春になると森を訪れた。そこに咲く白薔薇はアリサの魂そのものであり、 彼女がその場所で安らかに眠っている証だった。